灰谷健次郎著「うさぎの眼」を読んで

 

今年買ったものはLEDの蛍光灯。それから「不思議な国のアリス」と「うさぎの眼」という児童文学の本。「不思議な国のアリス」はイギリスの本なので少しわかりずらかった。「うさぎの眼」は日本人の書いたものなので非常にわかりやすかった。そこで、この本についての感想を書いてみよう。

これは塵芥処理場のある町で教員生活を送る若い女性教師「小谷先生」を主人公とする児童文学である。小谷先生は若い身空ながら夫がいる。夫婦共稼ぎなのだ。小谷先生の実家は裕福であり一人娘らしい。

受け持ちのクラスにはいろいろな生徒がいる。小谷先生が心労を重ねなければならなくなったのは、塵芥処理場の粗末な住居に住む祖父と一緒に暮らす「鉄ツン」こと「鉄三」という子供なのだ。先生は赴任早々この子供に「引っ掻かれる」。しかしどうして引っ掻いたのかを理解するにつれて鉄三をだんだん理解するようになる。鉄三には妙な性癖があって、「蠅を飼っている」のだ。先生も一緒になって「蠅の観察」を始める。こうして頑なで意固地だった鉄三もだんだん打ち解けてくる。あるときハム工場の人が学校に来て蠅を退治してもらえないかと相談に来る。少々見当の外れた訪問だと先生は思ったが、鉄三のことを思い出し工場に連れて行ってみる。そこで鉄三はハム工場にどうして蠅があつまるかを一目で見破り、「蠅博士」と言われるような大活躍をするのだ。

また、鉄三の可愛がっている犬が野犬狩りの業者につかまり檻に入れられてしまうという事件もあった。これを鉄三の仲間の子供たちは相談して檻のある車を襲、檻を壊し鉄三の愛犬を救い出すのだ。犬というのは鑑札の首輪をを付けていないと野犬と思われ業者に連れていかれてしまいますからね。しかしこの子供たちの行動はすぐに学校関係者に問題視され、織の弁償代を払わなければならなくなる。このために小谷先生などの仲間の先生と子供たちは廃品回収業をしてそのお金を稼ぐのだ。こうなれば先生と子供の仲は親密になりますね。

ここまでは児童文学だと思うが、この小説は小谷先生と夫との生活にも触れていて、児童文学の領域を超えているような面もある。つまりこういう教師生活に夢中になっている妻に対して夫は不満なのだろう、もっと家庭のことに力を入れてほしいと思っていることが、妻との不和につながっているように思う。

作者の灰谷健次郎氏は17年間の教員生活ののちに文筆生活に入った人である。だからこの本は氏自身の生活の反映の本なのだろう。面白い本ですよ、児童文学も読んでみるものだと思いました。